普通の出来事

ペーパー加湿器の件と直接は関係のない話だ。
もう、6年も前の冬のことになる。

家族で栂池に行って来た。 
息子が、初級コースで急にスキーをコントロールできるようになった。
(まぁ、そうなって欲しい思いもあって、初級コースがだだっ広い栂池に行ったわけだが) 
リフトの上から下まで、転ばずに一人で普通に滑ってこれるようになったので、私は、8年ぶりに自由に(息子に完全併走しながら起こしたり引いたりすることを強要されることなく)滑る権利を得た。 
... で、8年前に練習しかけていた、えー、何て言うのかしらん、スノボで普通にすべりながらぴょんと跳ねて1回転だけ回るやつの練習をすることにした。 
そこそこ失敗するので、ちょうど、息子と等速になる。 
途中で、私がすっ転んだところに息子が追いついて止まり、ストックで少し離れた地点を指しながら言った。 

「次はあっちのリフトに乗りたい。だから、もっと左の方に降りない?」 

ああ。 


何だか、最近の彼は少し変わってきた、特に昨日、今日は違うな、とは思っていたが、これは想像していなかった。 

自分の望みを、理由の説明と共に、要求ではなく提案にする。 
「理路整然」と言うにはささやかな内容だ。 
だが。 
多動に、知恵遅れに、後、何だかんだひっついた彼がそういうセリフを吐く。それは私にとっては夢だった。 

彼自身の努力もある。が、その時私はゲレンデで、妻が凄いと思った。

多動に、知恵遅れに、後、何だかんだひっついた彼がそういうセリフを吐く。それは妻にとっては未来だった。 

3歳の時に彼のそれが発覚してから、妻は一度も諦めなかった。 
どうすれば良いのか学び倒し、実は偉い先生方もどうすれば良いのか良くは知らないことを知り、それでも意思の疎通も難しい彼に教えまくり、片っ端から消えていく。 

朝露を拾い集めて砂漠に巻くような日々の繰り返しにそこそこ泣いていた。 

そこまでがんばって詰め込んでそれが失われて泣いて、可能性が無いかもしれないことで、そんなになって、それって君も彼も幸せじゃないじゃんと言い合うこともあったが、このケースでは私が間違っていた。

この二日間、彼は暗黙のルール(特に日本は多いと思う)を逸脱もせず、それでいて自分を押さえ込むこともなく前向きに楽しんでいた。 
何ていうか、その、上手い表現が見当たらないのだが、強いて言えば、妻と息子に尊敬の念を抱いた。それは、2017年の今も抱いている。 

んー、まぁ、スキー場っていう場所が良かったような気もする。

ペーパー加湿器型アート ACONS Ray-Noale

クラウドファンディング デザイン多様・自然蒸発の16倍・発達障がい者が生産可能 「飛び出すペーパー加湿器」プロジェクト